5月14日≪春採公園≫
釧路博物館から坂を下ると目の前に湖が広がっている。春採湖である。何度も釧路に来ているのに実際に湖岸を歩くのは今回が初めて。「へえ〜。意外とおもしろい」。いろいろな植物がたくさん咲いている。よく見ると、桜の木がかすかにピンクに染まったつぼみをつけていた。そろそろ開花だ。「あ、あそこのは開いてる」。東京の今年の桜をたくさん見たはずなのにやはりあこがれてしまう。
湖の反対側には六花亭があった。相方が言った。「よし、お昼はあそこにしよう」。博物館から六花亭まで歩くことにした。最初、海側に向かって歩いていたが、しばらくいくと、相当距離があるということがわかった。我々はあきらめて陸側を回って行くことにした。六花亭は、国道のゆるい急カーブでまわったところの一番高台にある。「うわ〜。あそこまで上るのか・・きついなあ」。すると左側に階段を見つけた。「ほお。ここをあがれば直接六花亭の脇に出られるじゃん!」。近道を発見。案の定、六花亭の前に出た。さっそくお昼をいただく。ここの窓からの眺めは最高なのだ。明るいテラスで、光がフロアいっぱいに広がっている。将来家を建てるならこんな感じにしようと心に決めた。窓の向こうには、春採湖が広がり、向こう側に釧路博物館が見えた。「わあ〜あそこから歩いてきたんだね」。相方と話しながらピザをほおばった。
   
5月14日≪細岡大観望≫
細岡展望台は、釧路湿原の様子が一望できる絶好の場所である。湿原はかすかに新緑に色づいていた。「すばらしい!!」の一言である。我々のほかには誰もいない。この絶景をひとりじめ(ふたりじめ?)。この感動は、見た人にしかわからないだろう。
  
5月14日≪シラルトロ湖の展望≫
我々がいつも泊まるのは、茅沼駅の近くにある旅の宿「六花」である。その「六花」から徒歩で20分くらいのところに「いこいの家」がある。温泉旅館である。シラルトロ湖が目の前に広がる。実はこの宿の駐車場から裏庭を通り過ぎていくと、自転車の遊歩道が湿原へと続いているのだ。実にいいサイクリングコース。このサイクリングコースの終点にはちょっとした展望台があり、そこから湿原を眺めることも出来る。
そこからさらに木道が続いていて、湿原へと入ることも出来る(あまり人が行かないようだが)。昨年はこの木道が大雨で腐って、一時通行止めになったらしいがまた新しく木道が出来ていた。しめしめ我々だけだ。相方と二人で木道を歩く。木道の周りには水芭蕉や谷地坊主が姿を現していた。あれえ?水の中で何かが動いている。水が湧き出ているのかなあと顔を近づけた瞬間ひるんだ。「お、お、おたまじゃくし!!」真っ黒い小さな尻尾が無数に動いている。うれしさのあまり木道から落ちそうになった。「う〜ん何という感動」「となりのトトロ」のメイちゃんが「おじゃまたくしい〜!!」と叫ぶあのシーンを思い出してしまった。何かがこれから起こる、わくわくした心境。
    
5月15日≪コッタロ湿原≫
どうしようかと思ったけどやはり歩くことにした。以前15年前に来たときは、晩夏の頃だった。この道は車の通りが激しいからあまり歩きたくないのだが、でも春のコッタロを歩いて見たいと思った。我々が入ると、すぐ後ろから車が一台走り去っていった。ちっとも速度を落とすとか全く遠慮しないドライバー達。車が走り去るたびに砂煙が上がる。とても歩いているほうはたまらない。そう思っているとまた前から一台、続いて二台。「・・・・」。
もういい加減にいやになった。コッタロを歩くのを断念して、二本松の展望場所があるのでそっちに非難することにした。「この道はもうおしまいだな」。どうしてこんなにすばらしい自然があるのに歩こうとしないのだろうか。二本松の展望場所はすばらしかったが、風が強かった。寒かった。
   
5月16日≪遠矢から温根内≫
感動の15キロといわれる湿原のコース。今回は少し短めにして12キロ程度にした。この道はコッタロと違って、途中から車が入れないので最高のコースだ。誰も歩く人がいないのか我々の二人だけ。「う〜ん。いい気持ち!!。この道はすごいよ!!」。一人で興奮している。あたり一面湿原、湿原、湿原だ。生半可なコースではないことを知る。
草むらの中に鹿を発見。じっとこちらを警戒しているようだ。そのうち草むらの中に消えてしまった。しばらく行くと、干潟に水鳥の群れが。これも湿原ならではの光景だ。「お、丹頂を発見」。相方が叫んだ。 最初1羽かと思ったら、すぐ後ろにもう1羽。2羽がだんだん近づいて、いきなり天に向かって首を伸ばし、鳴き始めた。「すてき!!」。初めて聞く感動の鳴き声。どうやら警戒しているらしい。本来、この時期丹頂は子育てで湿原の中にいるため、ほとんど姿をあるわすことはないそうだ。しばらく見ていたかったが、ひたすら歩き続けるしかないのだ。3分の1ほど来ると、また数キロ先に鹿の群れを発見。親子だろうか。ちょっと離れて雄の鹿があたりを警戒していた。再び歩き始めた。
「お〜い。前、前」。相方が叫ぶ。よく見ると、なんと、丹頂さんが我々が歩いている道路の数百メートル先を横断(下写真)しているではないか。「え〜?うそオ〜」。目が合ってしまった。しばらく動けなかった。すると、丹頂さんは、こちらを見ながらゆっくりゆっくり道路を横断し、端まで来ると、その瞬間「見て!」とでも言うように羽を広げ、そのまま湿原に向かって飛び立ったのである。「きれ〜い!!」。湿原では何が起こるか全くわからない。ほんとうに神秘的なところだ。
    
    
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