■ 窓のない家
私の部屋には窓がないのである。
だから庭の木はもちろん、
隣の家の奥さんの姿なんぞもちろん
おがむことはできないのである。
そのかわり天井がないために、空が見わたせる。
部屋に寝転んで上を見ると、とても綺麗だ。
夜などは☆が一面に見渡せるので実に最適なんである
きっとどんな天体観測所よりも最適に違いない。
季節には折々の星座を楽しみながら 眠りにつくことができる。
時折、☆が降ってきて
枕元に冷たさを感じたこともあった。
一瞬錯覚かと思ったのだが、
よく見ると、☆の形をしていた。
私はこれを、
お気に入りの箱に入れてしまっている。
この最適な部屋を一目拝見しようと、
友人達が遠くからはるばるやって来る。
どの友人も帰りがけに必ず聞くことだが、
それは、
「雨が降って来たらどうするんですか」
である。
こういう時は決まって誰もが同じ質問をするものだ。
そんな時は私もすかさずこう答えることにしている。
「常に傘を用意してあります。ご心配なく」。
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