■ 小さな☆の湖のおはなし
宇宙の果ての果てにある小さな☆のおはなし。
その☆には名前がありません。名前がないほど小さな小さな星
なのです。
その☆の真ん中にひとつだけ湖がありました。
湖は美しいほど青々としていました。
それはどの星の湖にも負けないくらい美しいものでした。
でも湖は悲しそうでした。
ある日、湖は太陽に向かって言いました。
「太陽さん、わたしは何のためにいるのでしょう」。
「わたしはいつからこうしているのでしょう」。
「これから先もずっとこうしているのでしょうか」。
太陽は何も答えませんでした。じっと湖を照らしているだけでした。
湖はそれでも問い続けました。
「わたしは、誰かに私の姿を見せたいのです」。
「でも、誰もいません。このまま死んでいくのでしょうか」。
やはり、太陽は黙ったままです。
湖はあきらめてしゃべるのをやめてしまいました。
そのときです。頭上を何かが通り過ぎていきました。
あたりがぱあ〜っと明るくなってまぶしいくらいでした。
湖はあまりのまぶしさに目を閉じました。
しばらくは目を開けていられなかったのです。
いったい何が起こったのでしょう。
船です。一隻の宇宙船が頭上を通り過ぎていったのです。
びっくりした湖は身を隠すようにしていました。
どれくらいの時間が経ったでしょう。
あたりはまた静かになりました。
湖はそっと目を開けました。
「ふう〜。助かった。いったい何が起こったんだろう」。
と、大きく目を開けた瞬間湖は驚きました。
「え?」。
目の前に小さな木が立っていたのです。
木は湖に話かけました。
「こんにちは、湖さん。やっと落ちつき場所をみつけたよ」。
湖は目をぱちくりさせて木に言いました。
「どうしてここにいるの?」
「ぼく、ずっと旅してきたんだよ。
ぼくの落ちつく場所がないかね。
でもこんな宇宙の果てにはなかなかぼくの住めるようなところ
がなくてね。
なかばあきらめていたんだ。
そしたら太陽の向こうに君の☆が見えたんだ。
近寄ってみたら君の姿が見えてうれしかったよ。
だって、君は青々としてなんてきれいな姿をしているんだろう
って感動したんだよ。
君なら、ぼくの姿を美しく見せてくれるだろうって思ってね」。
湖は初めて自分の存在に気がついたのです。
そしてうれしくて思わず涙があふれました。
その涙もまた青々として美しいものでした。
それが湖から流れ出し、豊かな川となりました。
そのとき、太陽が顔を出し、湖と木を照らしていきました。
それはそれは美しい光景でした。 |