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■ 南の島の小さなおはなし


  太平洋の真ん中。青々とした水平線。
  珊瑚礁に囲まれたそれはそれは美しい島がありました。
  その名を「シュール」といいます。

 

  巨匠ダリが、以前この島に住んでいたことから「シュール」と
 名付けられたといいます。
  その証拠に、島のいたるところに変形した時計だとか、大きく
  歪んで、そしてたくましい人の指などが置かれてあります。
  きわめつけには、髭を生やした彼がイスに座ってるんです。
  本当にみごとなものです。

 

  でもいまだかつて、この島を訪れたという人は一人もおりませ
  んでした。どこにあるのだか、どうやって行ったらよいのだか
  さっぱりわからないからです。

 

  このうわさはたちまち世界中に広まり、各国の勇敢な若者達が
  何度も挑戦してみたのですが、誰一人として、この島へ入れた
  者はありませんでした。

 

  ところがある日、シュール島から数千マイルもはなれたところに
  住んでいた冒険家のジムが、この島へ行って名をあげようと考
  えました。彼はすぐに、全財産をはたいて船をつくらせ食糧も
  積み込んでいざ、島へ向かいました。

 

  いく日も いく日も通りすぎる波間は皆同じでした。あたりは
  何ひとつありません。いったい何羽のカモメが、彼の船の上を
  通り過ぎていったことでしょう。彼はもう疲れ果てていまし
  た。食糧がもうあとわずかだったからです。あきらめてひきか
  えそうとしたその時、前方に島が見えました。

 

  彼は一目散に、マストの上にのぼって望遠鏡でのぞいて見まし
  た。「あった!あったぞ!とうとう来たんだ!」彼は喜びのあ
  まり海に落ちそうになりました。

 

  あと数百メートル。いかりを下ろし、小さなゴムボートに乗り
  込みました。しかし彼は悩みました。「いったいどうやって入
  ったらいいのかなあ・・」島には入り口がないのです。

 

  島の裏へ回ってみようと思ったのですが、どうしても前に進め
  ないのです。珊瑚礁が大きすぎてなのか、どうしてもぶつかっ
  て進めないのです。反対のほうへ進もうとしましたが同じでし
  た。

 

  島には壁があるようです。それ以上は進めませんでした。
  それもそうですね。なんたって、この島そのものが絵なのです
  から。

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